白内障の手術で入院中、標記の本を家内が持ってきてくれた。高校時代の堺先生から送ってもらったものだ。
 堺先生は私達のクラスの担任ではなく、クラスで数学を教えてもらっていた先生だった。当時のイメージではチョットメタボ気味でチャーミングな感じの先生だったと思う。しかし、私には違う記憶がある。当時、我が家は父の会社の社宅に住んでいた。長屋タイプの狭い家で戸数の多い社宅だった。その社宅のはずれに広くて大きな県営住宅があった。堺先生はここに住んでおられた。私は徒歩通学していて必ず先生の家の横を通っていた。洗濯物を干しておられた先生をよく見かけた。そして、学校に着くころは自転車で追い越されていた・・・のを思い出す。退院翌日、歌集をもらったお礼の電話を入れると先生もこのことを話しておられた。同じように思っておられたのだな〜・・・と。当時は保育園もなく共働きをされていたことを思うと大変なことだったんだな〜・・・とあらためて思う。
 その堺先生の出された歌集は《坂の街》というタイトルで、280頁にわたり460首の歌が載せられている。(角川書店発行)

 私には歌は分からない。しかし、少しづつではあるが、見ていく内に先生の人生が歌につづられ、まとめられているように思える。そんな中、私は先生に教わった数学と歌の接点を見つけようと歌集を眺めた。xyzもピタゴラスの定理もない。〈五七五 七七〉がそれに当たるのだろうか。これから少しずつ理解していきたい。
 歌集から
  ふた親に受けし水晶体流れゆき人工レンズに空青く高し
  とほき日に勤めし校舎白じろと旅人われの窓辺に速し
 
 私にはこのようなものがない。一つの事をもっと掘り下げてやっていくほどの気力も、年齢もない。せめて定年後始めたウクレレでしっかり苦しみながら、その中で楽しさを見つけるしかない・・・か?。